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ご家族が亡くなられた後、各種手続きの中で「生前、障害年金をもらえる状態だったのではないか?」と気づかれるケースがあります。
結論から申し上げますと、ご本人が亡くなった後でも、要件を満たせば障害年金を請求し、ご遺族が受け取ることが可能です。
ただし、ご存命中の請求に比べて「超えなければならないハードル」が高くなるのが現実です。今回は、亡くなられた後の障害年金請求(未支給年金の請求)について、社労士解説します。
亡くなられた後に請求が認められた場合、これから将来に向かって年金が支払われるわけではありません。
本来ご本人が受け取るはずだった「障害認定日(初診日から1年6ヶ月時点)の翌月分」から「亡くなられた月分」までの年金が、一括(一時金のような形)でご遺族に支払われます。これを実務上は「未支給年金(みしきゅうねんきん)」として取り扱います。
ここが最も重要なポイントです。
障害年金の請求方法には、本来の「障害認定日請求」と、後から悪化した時点での「事後重症請求」の2種類があります。しかし、ご本人が亡くなっている場合、「事後重症請求」は物理的に不可能です。
なぜなら、事後重症請求は「請求時点(現在)の診断書」が必要ですが、亡くなられた方の「現在の診察」はできないからです。
したがって、「障害認定日(初診日から1年6ヶ月後)」の時点で、障害等級に該当する状態であったことを証明できるかどうかが、受給の分かれ道となります。
審査の過程で、障害認定日の診断書に加え、亡くなる直前3ヶ月以内など、直近の診断書の提出を求められる場合があります。これは、亡くなられた時点まで障害の状態が継続していたかを審査機関が確認するためです。したがって、診断書は障害認定日の1通だけで必ずしも足りるとは限りません。
手続きを進める前に、以下の条件をクリアできるか確認が必要です。特に医療記録(カルテ)の有無が決定打となります。
この年金を受け取ることができるのは、亡くなられた方と「生計を同じくしていた」以下のご遺族です。順位が高い方が優先され、先順位者がいる場合、後順位者は受け取れません。
単に「親族である」だけでは請求できません。「生計同一関係(お財布が一緒であること)」が必要です。
障害年金の手続きにおいて見落とされがちなのが、受給した後の「税金(所得税・住民税)」の問題です。通常、障害年金そのものは非課税ですが、ご本人が亡くなった後にご遺族が受け取る場合、税法上の扱いが大きく異なります。
| 項目 | 税法上の区分 | 税金 |
| 通常の障害年金 | 非課税所得 | かからない |
| 亡くなった後の未支給年金 | 一時所得(課税対象) | 所得税・住民税の対象となる |
ご遺族が受け取った未支給年金は、障害年金ではなく、ご遺族自身の「一時所得(いちじしょとく)」として扱われ、課税対象となります。
未支給年金は請求者個人の「一時所得」となるため、同順位の遺族が複数いる場合(例:父と母)、誰が代表して請求するかによって、世帯全体の税負担額が大きく変わってきます。
未支給年金の額は、特に遡及請求が認められた場合、数百万円と高額になることがあります。この高額な「一時所得」が加わることで、請求者の所得税率や各種手当の制限に影響が出る可能性があるからです。
| 比較対象 | もともとの税率 | 未支給年金加算後の影響 |
| 所得が高い方 (例:現役で働いている父) | 高い税率が適用されている | もともとの所得に上乗せされ、さらに高い税率が適用される。所得制限のある手当等に影響が出る可能性がある。 |
| 所得が低い方 (例:専業主婦の母) | 低い税率(非課税)である | 所得が低いため、加算されても低い税率で済み、税負担を最小限に抑えられる可能性が非常に高い。 |
同順位の遺族が複数いらっしゃる場合は、「現在の年収(所得)が低い方(特に専業主婦の方など)」を請求者として選定した方が、世帯全体で見た時の税負担が軽くなる(得をする)ケースが多いです。
本人が亡くなった後の障害年金請求は、「当時のカルテが残っているか」と「当時の状態が等級に該当するか」という、過去の事実の立証を求められます。医師への診断書依頼も、ご本人がいない中でご遺族が行わなければならないため、精神的・実務的な負担は決して小さくありません。
しかし、本来受け取るべきだった権利を行使することは、ご本人様の生きた証とも言えます。カルテさえ残っていれば可能性はありますので、諦める前に一度専門家へご相談されることをお勧めします。