ADHD(注意欠陥多動性障害)の受給事例②

違法薬物使用歴(覚醒剤・大麻・シンナー等)があるADHD・知的障害の障害年金受給事例

覚醒剤・大麻・シンナー等の違法薬物使用歴がある場合、障害年金の申請は難しいと考えられがちですが、現在の障害状態との因果関係が適切に整理できれば受給に至るケースもあります。

目次
相談者30代女性
傷病名注意欠陥多動性障害、知的障害
決定した年金と等級障害基礎年金2級
申請方式事後重症請求

発病の経緯と相談時の状況

幼少期から集団行動が苦手で、こだわりが強かった。小学校では勉強についていけず、よくしかられていた。
家庭内では虐待を受けており、学生時代には違法薬物(覚醒剤、大麻、シンナー等)を使用したこともあった。
アルバイトではミスが頻発する状態だったため、通院した結果、ADHD(注意欠陥多動性障害)や知的障害と診断された。


他者との交流に大きな問題を抱えており、空気を読むのが苦手。
日常生活全般に大きな支障があるため、訪問看護を利用している。
生活保護で暮らしている。

生活保護と障害年金の関係についてはこちら

依頼から請求までのサポート

本件は、生活保護を受給中であったご本人が、担当ケースワーカーの勧めにより障害年金申請を検討され、当事務所へご相談いただいた事例です。
過去に覚醒剤・大麻・シンナー等の違法薬物使用歴があるという事情から、他の社労士事務所では受任を断られてしまい、申請そのものを諦めかけていた状況でした。

当初のヒアリング段階では、長期間にわたる薬物使用歴が確認され、現症との因果関係が争点となる可能性が高いと判断しました。
しかし、生活歴・成育歴・日常生活能力を丁寧に整理していく中で、知的障害の存在が確認され、判断力や環境適応能力の乏しさが、薬物使用に至った背景として大きく影響していた可能性が明確になっていきました。

そこで、主治医と相談した結果、

  • 違法薬物の使用歴からは相当期間が経過していること
  • 現在の精神・認知機能の状態は、薬物による後遺症とは評価できない、または影響が極めて限定的であること

について、医学的見解を明確にしていただくことができました。

当事務所では、違法薬物使用歴があるから不支給になるという短絡的な判断は行わず、
「現在の障害状態が、年金制度上どの傷病に基づき、どの程度日常生活に支障を及ぼしているのか」
という本質的な審査基準に沿って、病歴・就労状況等申立書および診断書内容の整理を行いました。

ご本人は生活保護受給中ではありましたが、将来的な社会復帰を見据え、自立の一助として障害年金を受給したいという強い意向をお持ちでした。その意思を尊重しつつ、市役所とも連携を取り、診断書作成費用および社労士による申請代行費用については、必要経費として認めていただくことができました。

その結果、障害年金2級の受給が決定し、ご本人の経済的基盤の安定につながる成果を得ることができました。

違法薬物使用歴がある、他事務所で断られた、といった事情があっても、
医学的・制度的に可能性がある限り、当事務所は最後まで検討し、適切な申請を行います。
同様の事情でお悩みの方も、まずは一度ご相談ください。

違法薬物と障害年金についてはこちら

結果

障害基礎年金2級の受給が決定しました。

下の表で、黄色に該当する事例です。

判定平均/程度(5)(4)(3)(2)(1)
3.5以上1級1級又は2級   
3.0以上3.5未満1級又は2級2級2級  
2.5以上3.0未満 2級2級又は3級  
2.0以上2.5未満 2級2級又は3級3級又は3級非該当 
1.5以上2.0未満  3級3級又は3級非該当 
1.5未満   3級非該当3級非該当

《表の見方》

1.「程度」は、診断書の記載項目である「日常生活能力の程度」の5段階評価を指す。 2.「判定平均」は、診断書の記載項目である「日常生活能力の判定」の4段階評価について、 程度の軽いほうから1~4の数値に置き換え、その平均を算出したものである。

3.表内の「3級」は、障害基礎年金を認定する場合には「2級非該当」と置き換えることと する。 《留意事項》 障害等級の目安は総合評価時の参考とするが、個々の等級判定は、診断書等に記載される 他の要素も含めて総合的に評価されるものであり、目安と異なる認定結果となることもあり 得ることに留意して用いること。 

目次