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精神障害のある方が働くうえで、これまで「手帳の更新」は、ご本人にとっても企業の人事担当者にとっても、決して小さくない悩みの種でした。
精神障害者保健福祉手帳の有効期限は2年です。もし更新手続きをうっかり忘れてしまったり、あるいは症状が良くなって手帳の対象から外れたりすると、その瞬間に企業の「法定雇用率」の算定から抜け落ちてしまいます。
実務の現場では、この「突然算定から外れる」ことがいかに大きなプレッシャーを生んでいるかを感じます。企業側からすれば、法定雇用率の達成は義務であり、ある日突然数字が未達成に転落するリスクはなんとしても避けたいところです。その結果、せっかく職場の戦力として定着してきているのに、手帳の有無に振り回されてしまう状況がありました。
そして何より、働くご本人にとって残酷なジレンマがありました。病状が回復して手帳が不要になるのは、本来なら「おめでとう」とみんなで喜ぶべき大きな前進です。それなのに、「手帳がなくなると会社の雇用率に貢献できなくなり、職場に居づらくなるのではないか」という不安を抱えなければならない。これはどう考えても本末転倒です。
今回、厚労省が示した「更新されなくても1年程度は雇用率に算定できる」という猶予期間の案は、こうした現場の矛盾をうまく解きほぐすものです。継続して働く見込みさえあれば、1年間は猶予が与えられるため、企業は数字の急変に慌てることなく、落ち着いて継続雇用の道を探ることができます。
厚労省の試算では、この猶予によって約1万9千人が算定に含まれ続けるとのこと。これは単なる「企業向けの数字の救済」ではなく、働く人が手帳という枠組みにとらわれず、培ってきたキャリアを職場でそのまま活かし続けるための大切なセーフティネットです。
障害者雇用の本質は、法律の数字を合わせることではなく、目の前の人がその人らしく働き続けられる環境を作ること。今回の見直しは、日本の障害者雇用が「数字の達成」から「真の定着」へとステップアップするための、とても意義深いターニングポイントになると感じています。
精神障害者の雇用率、手帳更新されずとも1年程度猶予の方向 厚労省
執筆者情報
氏名(社労士名):野口幸哉
所属:東京・埼玉精神疾患障害年金ネット
資格:社会保険労務士
専門領域:障害年金、精神疾患に関するサポート業務
実務経験:10年以上、申請代行800件以上
プロフィールページはこちら → https://lin.ee/N7Xm2sR
監修
監修者:野口幸哉(社会保険労務士)
※本記事は専門家による内容確認(ファクトチェック)を経て公開しています。