【ニュース要約】障害年金審査における調査結果の公表

2026年1月16日、厚生労働省は障害年金の審査で使用される「認定調書」の取扱いに関する調査結果を公表しました 。([資料:厚生労働省公表PDF])これは、職員が当初の認定医の作成した調書を廃棄し、別の認定医に審査を依頼し直しているのではないかという報道を受けて行われたものです 。

目次

調査結果のポイント:

  • 認定医変更の実態: 審査において認定調書に誤りや疑義が生じた際、同じ認定医に再審査を依頼するか、別の認定医に依頼し直す運用が行われていました 。その際、作り直しによって不要となった当初の調書は、一定期間保管された後に廃棄されていました 。
  • 変更の理由: 調査対象となった811件において、別の認定医に変更した主な理由は、対面審査が基本である中で、標準的な処理期間(3ヶ月)を遵守するためにスケジュールを調整した結果でした 。
  • 判定への影響: 認定医が変更されたことで、当初「支給」判断だったものが「不支給」や「下位等級」に変更されたケースは17件確認されました 。ただし、これらについては常勤の医療専門役(医師)が再確認を行い、最終的な判断結果は妥当であり、疑義はないと結論付けられています 。
  • 今後の対応: 今後は客観性と公平性を確保するため、別の認定医に依頼する場合でも当初の認定医の意見(調書)を保存し、審査資料として活用する運用に改められます 。

「妥当性の確認」は身内のお手盛り

今回の調査では、医師変更により判定が「支給」から「不支給」などに変わった17件について、「最終的な判断結果の妥当性を確認したが、疑義はなかった」と結論づけています 。 しかし、これを確認したのは内部の「医療専門役」です 。

一度専門家である認定医が「支給」と判断したものを覆したのですから、本来であれば第三者機関による検証が必要です。それを身内だけで「問題なし」として処理するのは、透明性が確保されているとは言えません。

「標準処理期間3ヶ月」という言い訳の矛盾

今回の調査報告で、私が最も注目したのは「なぜ認定医を変更したのか」という理由です。 報告書には、認定医を変更した主因について「標準的な処理期間(3ヶ月)を遵守する観点から、主にスケジュールとの関係で変更した」と記載されています 。

確かに、障害年金の審査において「3ヶ月」というのは一つの目安であり、私の体感としては、全体の約7割程度はこの期間内に結果が出ています。その意味では、機構側が「3ヶ月以内の処理」を目標に掲げていること自体は否定しません。

しかし、残りの3割、つまり少し複雑な案件や確認事項が発生する案件では、審査期間が超過することも珍しくありません。 特に私たちが現場で感じる強烈な違和感は、「こちらへの対応の遅さ」とのギャップです。

「返戻」の際は平気で待たせるのに?

実務では、診断書の内容に疑義があるとして、年金機構から私たち(請求者側)へ照会(返戻)が来ることがあります。 これに対し、私たちがどれだけ迅速に、例えば即日で回答や修正書類を提出したとしても、そこから審査が再開され、結果が届くまでにさらに3ヶ月近く待たされることが多々あります。

この場合、トータルの審査期間は半年以上になりますが、機構側は「確認が必要だったから」として、期間超過を当然のこととして扱います。

ここが最大の矛盾です。 

私たちへの再審査には平気で時間をかけるのに、内部の認定医とのやり取りにおいてのみ、「スケジュールの都合」を理由に、当初の担当医(一度内容を見ている医師)から別の医師へわざわざ変更するでしょうか?

「当初の認定医が忙しくて捕まらないから、3ヶ月を守るために別の医師に変えた」という説明は、裏を返せば「内部の都合による期間遵守は絶対だが、請求者側の待ち時間は考慮しない」と言っているようにも聞こえます。

あるいは、この「スケジュールの遵守」という理由は、別の事情(判定内容の変更など)を隠すための「後付けの理由」として持ち出されたのではないかと勘繰りたくもなります。

結論

今回の報告は、「あくまで事務処理上の都合であり、不正はなかった」という結論で幕引きを図ろうとしている印象を受けます。 

今後、4月末にさらなる調査結果や対応方針が出される予定ですが 、私たちは、行政の発表を鵜呑みにせず、実際の審査現場で恣意的な運用がなされていないか、厳しく監視し続ける必要があると思います。

執筆者情報
氏名(社労士名):野口幸哉
所属:東京・埼玉精神疾患障害年金ネット
資格:社会保険労務士
専門領域:障害年金、精神疾患に関するサポート業務
実務経験:10年以上、申請代行800件以上
プロフィールページはこちら → https://lin.ee/N7Xm2sR

監修
監修者:野口幸哉(社会保険労務士)
※本記事は専門家による内容確認(ファクトチェック)を経て公開しています。

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