一般雇用で「障害」や「年金」は隠してもいいの?

結論から言えば、一般雇用(クローズ就労)で働く場合、あなたには障害者手帳の有無や障害年金の受給を会社に報告する義務はありません。

面接や入社手続きで「言わなかったこと」が、後から法律違反になることも原則としてありません。

目次

1. 障害者手帳の申告は「任意」が原則

会社が従業員の障害者手帳情報を収集するのは、主に「障害者雇用率(法定雇用率)」にカウントするためです。しかし、厚生労働省のガイドラインでは、この確認作業について非常に厳しいルールを定めています。

  • 強制の禁止: 会社は、従業員の意思に反して手帳の所持を申告させたり、手帳の取得を強要したりしてはいけません。
  • 拒否権: 会社から「手帳を持っていますか?」と聞かれても、あなたは「回答したくない」と拒否したり、所持していても申告しない(クローズにする)ことができます。
  • 不利益取扱いの禁止: 申告しなかったことを理由に、解雇や降格などの不利益な扱いをすることは禁止されています。

【根拠となる指針】

プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン(厚生労働省) 
会社が障害者の把握を行う際は、利用目的(雇用率の算定など)を明示した上で、本人の同意を得なければなりません。 
詳細URL(厚生労働省PDF)プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの概要

2. 障害年金が会社にバレることは「ほぼない」

「年金をもらっていると、年末調整や社会保険の手続きで会社にバレるのでは?」と心配する方が多いですが、その仕組み上、会社に自動的に通知されることはありません。

  • 年末調整: 障害年金は「非課税」所得です。会社が行う年末調整は「課税される給与」の計算なので、障害年金は計算に一切関係しません。申告書に書く必要もありません。
  • 社会保険: 厚生年金の等級決定通知などにも、障害年金の情報は記載されません。
  • 唯一の例外: あなた自身が「障害者控除(税金を安くする制度)」を受けるために会社へ申告した場合のみ、会社はそれを知ることになります。知られたくない場合は、自分で確定申告を行えば会社には通知されません。

3. メンタル既往歴の確認は「就職差別」のリスクあり

採用面接で「過去にうつ病になったことはありますか?」「精神科に通ったことは?」と聞くことは、厚生労働省が定める「公正な採用選考」の観点から不適切とされています。

  • 業務に関係ない質問はNG: 応募者の適性や能力に関係のない事柄(病歴など)を把握することは、就職差別につながるおそれがあります。
  • 会社が聞いていい範囲: 会社が確認できるのは「(病名は問わず)現在の健康状態が、業務遂行に支障をきたさないか」という点だけです。

【根拠となる指針】

公正な採用選考の基本(厚生労働省) 採用選考時に、本来の適性・能力とは関係のない事項(家族状況、宗教、思想、健康診断の実施や既往歴の調査など)を把握しないよう求めています。
 詳細URL(厚生労働省HP)公正な採用選考の基本(厚生労働省)

【重要】ただし、注意すべき「唯一の例外」

「申告義務はない」とお伝えしましたが、一つだけ注意点があります。

それは「健康状態が悪く、業務に支障が出る場合」です。

もし、あなたが現在も通院中であったり、服薬の影響で業務中に眠気が出る、てんかんを持っており意識の消失がある、特定の作業ができない等の事情があるにもかかわらず、「健康です」と嘘をついて入社し、結果として業務ができなくなったり事故を起こしたりした場合は、「経歴詐称」や「告知義務違反」として解雇等のリスクが生じます。

  • × やってはいけない: 業務に支障があるのに「支障はない」と嘘をつくこと。
  • ○ 正しい対応: 「通院はしていますが、業務に支障はありません」や「重い荷物を持つ作業はできませんが、事務作業には支障ありません」など、「今の自分が働ける状態であるか」を正直に伝えること。

過去の病歴(既往歴)や、業務に関係のない手帳・年金の有無は、あなたの守られるべきプライバシーです。自信を持って線引きをしてください。

執筆者情報
氏名(社労士名):野口幸哉
所属:東京・埼玉精神疾患障害年金ネット
資格:社会保険労務士
専門領域:障害年金、精神疾患に関するサポート業務
実務経験:10年以上、申請代行800件以上
プロフィールページはこちら → https://lin.ee/N7Xm2sR

監修
監修者:野口幸哉(社会保険労務士)
※本記事は専門家による内容確認(ファクトチェック)を経て公開しています。

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