日米比較:障害年金制度の大きな違い

日本の障害年金とアメリカの障害年金。どちらの国にも「障害を持つ人の生活を支える制度」が用意されていますが、その中身を比べてみると、大きな違いが浮かび上がってきます。今回は、アメリカの障害年金制度と日本の障害年金制度を比較しながら、その特徴を整理してみましょう。


アメリカの障害年金制度(SSDI/SSI)

アメリカには、日本の障害年金にあたる制度として 社会保障障害保険(SSDI: Social Security Disability Insurance) と 補足的保障所得(SSI: Supplemental Security Income) があります。いずれも社会保障局(SSA)が運営しており、対象者の範囲や条件が異なります。

  • SSDI:就労歴と「就労クレジット」に基づいて受給資格が決まります。給与や自営業収入に対して社会保障税を納めることでクレジットを獲得し、一定数のクレジットを積み立てていれば受給が可能になります。
  • SSI:低所得者向けの制度で、就労歴が不十分でも所得・資産要件を満たせば対象になります。より福祉的な性格を持つ制度です。

就労クレジットとは?

日本でいう「保険料納付要件」に相当するのが、この就労クレジット制度です。

  • 2025年現在、年収 $1,730 ごとに 1 クレジットが付与され、年間最大 4 クレジットまで取得可能です。
  • 老齢年金は原則40クレジット(約10年の就労)が必要。障害給付については年齢によって必要数が変わり、例えば31歳以上であれば直近10年のうち20クレジットが必要になります。

障害の認定基準

アメリカで障害年金を受け取るための条件はシンプルですが非常に厳格です。

  • 前提となるのは 「完全就労不能(Substantial Gainful Activity: SGA)」。フルタイムで働ける能力があると判断されれば受給はできません。
  • 日本にある「3級(労働制限)」のような中間的な認定はなく、労働能力の喪失が要件となります。

精神疾患は対象になるのか?

結論から言えば、アメリカでも精神疾患は障害年金の対象です。社会保障局(SSA)が公表する「障害認定リスト(Blue Book)」には、精神障害のカテゴリーが用意されています。

主な対象例:

  • うつ病、双極性障害
  • 統合失調症、妄想性障害
  • 不安障害(パニック障害、強迫性障害など)
  • 発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD など)
  • 知的障害

ポイントは「診断名」そのものではなく、症状が労働能力や日常生活にどれほどの制限を与えているかという点です。

  • 長期にわたりフルタイムで働くことができるか
  • 日常生活や対人関係に重大な制約があるか

こうした基準によって、精神疾患であっても障害年金の対象となり得ます。


日本との比較

日本でも精神疾患は障害年金の対象であり、実際に受給件数の大きな割合を占めています。気分障害や統合失調症などが典型例です。
ただし認定基準の柔軟さには大きな差があります。

  • 日本:3級(労働制限)という「中間的な認定」が存在し、フルタイム勤務が難しい程度でも認定される場合があります。
  • アメリカ:あくまで「完全に働けないこと」が前提条件で、軽度の労働制限では認定されません。

まとめ

日本とアメリカの障害年金制度を比べると、次のような違いが際立ちます。

  • 日本は「労働制限」でも認定されることがあるのに対し、アメリカは「完全就労不能」でなければ認められない。
  • 精神疾患も両国ともに対象だが、アメリカは認定がより厳格。

この違いを知ることで、それぞれの国の社会保障制度が「どこに重きを置いているのか」が見えてきます。日本は「働きながらでも支える」仕組み、アメリカは「働けなくなったときにのみ支える」仕組み。制度の性格の違いが、障害を持つ人の生活の支え方にも大きな影響を与えているのです。

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