年金時効特例法とは?制度の概要・支給内容・対象を社労士がわかりやすく解説

年金時効特例法とは?制度の概要と支給内容・対象をわかりやすく解説

年金時効特例法は、年金記録の訂正により本来受け取るべき年金が時効で消滅していた場合でも、一定の要件のもとで全期間分を遡って支給するための制度です。本ページでは制度の趣旨、対象となるケース、支給内容と注意点をわかりやすく整理して解説します。

目次

年金時効特例法とは

一般に「年金時効特例法」と呼ばれますが、正式名称は 「厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成19年法律第109号)」 およびこれに関連する時効の特例規定を指します。平成19年(2007年)に発覚した「消えた年金問題」を契機に、国の記録管理の不備による不利益から受給者を救済するために制定されました。

制度の目的

本来、年金は法律に基づき「5年」で時効消滅します。しかし、

  • 国の記録管理漏れ(名寄せ漏れ)
  • 事業主の届出不備(厚生年金の未手続き等) など、受給者に非がない理由で年金記録が誤っていた場合、5年で権利を切り捨てるのは著しく正義に反します。このため、「記録の訂正」が認められた場合に限り、5年を超えて全額を支払うのがこの特例の趣旨です。

障害年金における「時効特例」

障害年金でこの特例を受けるには、単に「昔から障害者だった」というだけでは不十分です。以下のフローが必須となります。

  1. 年金記録の訂正が行われること (例:未加入だった期間が厚生年金期間として認められた、給与額の訂正により報酬比例部分が増えた等)
  2. その訂正によって、初めて受給権が発生、または年金額が増額すること
  3. 記録訂正後に改めて裁定請求(または改定請求)を行うこと

障害年金で使える具体的なケース

  • ケース①:納付要件の逆転満了 初診日において「未納」とされていた期間が、後の調査で「実は厚生年金に加入していた(給与天引きされていた)」と判明し、記録が訂正された結果、却下されていた障害年金が受給可能になった場合。
  • ケース②:報酬比例部分の増額 障害厚生年金を受給している人が、過去の標準報酬月額が低く登録されていたことが判明し、記録が訂正された場合。過去の全期間にわたって差額分が支払われます。

注意:適用されない「典型例」

実務上、ここが最も重要です。以下のケースは、国のミス(記録の誤り)ではないため、特例は適用されず「5年の壁」に阻まれます。

  • 診断書が後から出てきた: 「当時のカルテが見つかり、認定日まで遡及できた」としても、年金記録自体に誤りがなければ、特例の対象外です(直近5年分のみ支給)。
  • 制度を知らなかった: 社会的な理由や無知による請求漏れは救済されません。
  • 初診日証明の遅れ: 記録訂正を伴わない事実認定の遅れは、通常の時効ルールが適用されます。

FAQ

「時効特例法」が適用されるかどうかは、どこで確認すればいいですか?

まずは「年金記録の訂正」があったかどうかが唯一の判断基準です。 ねんきん定期便や年金事務所で確認できる「被保険者記録回答票」を見て、過去の職歴に漏れや誤りがないかを確認してください。記録に訂正がない限り、障害年金の時効特例法が適用されることはありません。記録の精査は複雑なため、不自然な空白期間がある場合は社労士による記録調査をお勧めします。

「時効特例」を適用してもらうためには、どのような情報や資料が必要ですか?

「年金記録の訂正」を認めてもらうための、客観的かつ具体的な証拠資料が必要です。

この特例は、日本年金機構が管理している現在の記録(未加入期間や低い報酬額など)が誤りであることを、国が認めない限りスタートしません。具体的には以下のような情報・資料が必要となります。

雇用や給与に関する直接的な資料

本人の記憶だけでは記録は訂正されません。当時の勤務実態を証明するものが最優先です。

請求内容に関する状況が分かる資料として例をあげると以下のようものになります。

  •  ・年金手帳 ・給与明細書 ・勤務先の辞令/当時の履歴書
  •  ・国民年金手帳 ・家計簿 ・厚生年金基金加入員証
  •  ・厚生年金保険被保険者証 ・源泉徴収票 ・事業主や総務担当、同僚の方のお名前
  •  ・確定申告書(控) ・預貯金通帳 ・勤務実態を示す当時の写真

参考

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