日本年金機構の「判定破棄」は単なるミスか、それとも組織犯罪か?

【独自】障害年金、医師の判定を破棄 機構職員、ひそかにやり直し(Yahoo!ニュース)

先日報じられた日本年金機構による「障害年金認定調書の破棄・やり直し」問題。このニュースは、我々社労士の間でも激震が走っています。今回は、さらに一歩踏み込み、「職員の刑事責任」や「組織的関与の疑い」について、法的・実務的な視点から考察します。

目次

1. 職員は「刑務所行き」になるのか?問われる法的責任

「公文書を勝手に捨てたのだから、犯罪ではないのか?」という声が多く上がっています。結論から言えば、「公用文書等毀棄罪(刑法258条)」に抵触する可能性が極めて高いと考えられます。

  • 公用文書等毀棄罪とは: 公務所の文書を損壊・破棄する罪。
  • 罰則: 3ヶ月以上7年以下の懲役。

認定調書は、医師の判断を記録した極めて重要な公文書です。これを職員が独断でシュレッダーにかける行為は、正当な理由がない限り明らかな違法行為です。もし「不支給にするために意図的に破棄した」ことが立証されれば、刑事罰の対象となり得ます。

また、虚偽の記録を新たに作成していれば「虚偽公文書作成罪」も視野に入ります。行政の根幹を揺るがす、極めて重い罪です。

2. 「個人の暴走」か、「組織的な指示」か

機構側は「事実関係を確認中」としていますが、関係者の証言では「長年続いていた」とされています。ここから推察されるのは、これが一部の職員による単独犯ではなく、「組織的な隠蔽・調整」であった可能性です。

なぜ、手間をかけてまで判定をやり直す必要があったのか? そこには、「支給件数(または不支給率)を一定の範囲内に収めたい」という、行政側の歪んだコントロール(ノルマや予算意識)が働いていた疑いを拭い去れません。もし組織的なマニュアルや暗黙の了解が存在していたのであれば、それはもはや公的年金制度の「崩壊」を意味します。

3. 「甘すぎる」という職員の主観は、何を根拠にしていたのか

報道にある「判定が甘すぎるからやり直す」という職員の判断。そもそも、医学的知識を持たない職員が、専門医の判断を「甘い」と断じること自体が異常です。

これは、本来「医学的基準」で決まるべき障害年金が、「事務的な都合」で操作されていたことを示唆しています。

  • 2級相当の診断書であっても、職員が「これは3級だ」と判断し、別の医師に3級の判定を書かせる。
  • 不支給に誘導しやすい医師をリストアップし、特定の医師に案件を回す。

このような運用が行われていたとしたら、我々が日々行っている「適正な申請」は何だったのか。怒りを禁じ得ません。

4. 社労士として、今、我々がすべきこと

この問題が明らかになった以上、過去に不支給決定を受けた方々の中に、「実は支給されるはずだったのに、職員に判定を握りつぶされた人」が含まれている可能性が非常に高いです。

私たちは今後、以下の活動を強化していく必要があります。

  1. 開示請求の徹底: 決定プロセスの不透明な事案に対し、より詳細な情報の開示を求める。
  2. 不服申し立て(審査請求)の再点検: 過去の不当な事例に対し、救済の道を探る。
  3. 徹底した監視: 行政に対し、第三者委員会による全件調査と、判定プロセスの可視化を強く要求する。

結び

障害年金は、憲法25条(生存権)に基づいた公的扶助の側面も持つ重要な制度です。その信頼を、身内の「さじ加減」で破壊した日本年金機構の罪は、万死に値すると言っても過言ではありません。

この闇がすべて解明され、公正な審査が取り戻される日まで、私は専門家として、そして一人の人間として、この問題を厳しく注視し続けてまいります。

執筆者情報
氏名(社労士名):野口幸哉
所属:東京・埼玉精神疾患障害年金ネット
資格:社会保険労務士
専門領域:障害年金、精神疾患に関するサポート業務
実務経験:10年以上、申請代行800件以上
プロフィールページはこちら → https://lin.ee/N7Xm2sR

監修
監修者:野口幸哉(社会保険労務士)
※本記事は専門家による内容確認(ファクトチェック)を経て公開しています。

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