双極性障害の受給事例①

双極性障害で障害基礎年金2級・遡及も認められた事例

主治医が退職しても、カルテ開示と適切な依頼で突破できたケース

目次

はじめに

今回ご紹介するのは、双極性障害で障害基礎年金2級が認定され、さらに遡及も認められた事例です。
特徴的だったのは、過去に診療を担当していた主治医が既に退職し、別の医療機関に勤務していたにもかかわらず、適切な手順を取ることで遡及認定に至った点です。

「主治医が変わったから、遡及は無理だろう」と諦めてしまう方は少なくありません。
本事例は、その固定観念を見直すきっかけになる内容です。

相談者30代男性
傷病名双極性障害
決定した年金と等級障害基礎年金2級
申請方式遡及請求

発病の経緯

ご本人は学生時代から、人間関係がうまくいきにくい傾向がありました。
中学生の頃、無気力感が続いたこともあり、
人間関係の不和や無気力を改善する目的で初めて精神科を受診しました。

その後、高校進学後は一時的に症状が落ち着いたため、通院を中断。

しかし、就職活動の面接や授業で人前に出る場面が増える中で、
不眠や不安が強まり、再び通院が必要
となりました。

社会人になってからは、仕事でのミスが続き叱責されることが多く、
徐々に体調が悪化していきました。
こうした経緯を経て、本格的な治療が必要となりました。


相談時の状況

相談時には、日常生活に次のような支障が見られました。

  • 食事:1日1食しかとれない
  • 入浴:週に1~2回、最近は外出する日のみの入浴しかしていない
  • 清掃・家事:同居人にほぼ任せている
  • 買い物:同居人に依頼
  • 金銭管理:躁状態になると借金をしてしまう
  • 服薬管理:体調が悪いと服薬を忘れがち
  • 対人関係:強い対人恐怖があり、会話できるのは主治医と同居人程度
  • 安全配慮:ぼんやりしている時間が多く、車の自損事故を複数回経験
  • 行動制御:躁状態で、用事がないのに飛行機で遠方へ出てしまうことがある
  • アルコール依存症:飲酒問題も併存

これらは、日常生活能力の低下が広範囲に及んでいることを示す重要な要素であり、初回相談の見立ててでも2級相当とお伝えしました。

依頼から請求までのサポート

まず、現在通院している病院に現症用と遡及用の診断書を依頼しました。
しかし遡及用に作成された内容は、ご本人の当時の状態の認識よりも相当程度軽い評価となっていました。

そこで先生に診断書の作成基準を確認したところ、

過去の状態はカルテから推測するしかなく、患者として直接見たわけでもないので重く書くのは難しい

という回答でした。
医師としては、当時の状況を断定的に評価することに慎重にならざるを得ず、ここが最大の壁となりました。

過去の通院歴を整理しカルテ開示を進める中で、
長く治療を担当していた主治医が 別の医療機関へ異動している ことが分かりました。

そこで、

  1. 当時の主治医の現在の勤務先を特定
  2. 事情を説明し、遡及用診断書の作成をする上で必要なカルテの開示を依頼
  3. 現在の勤務先の病院名で診断書を作成
  4. 備考欄に「過去に○○病院で当該患者の診察を担当していた」旨を明記

という方法で対応しました。

「勤務先が変わった医師でも、当時の状態を最もよく知る医師」であれば、
適切な補足記載により遡及診断書を作成できるケースがあります。

結果

障害基礎年金 2級で認定遡及請求も認められ、過去分も支給されました。

主治医が変わっても、当時の状態を理解している医師に依頼できたことで、
妥当な認定につながりました。

下の表で、黄色に該当する事例です。

判定平均/程度(5)(4)(3)(2)(1)
3.5以上1級1級又は2級   
3.0以上3.5未満1級又は2級2級2級  
2.5以上3.0未満 2級2級又は3級  
2.0以上2.5未満 2級2級又は3級3級又は3級非該当 
1.5以上2.0未満  3級3級又は3級非該当 
1.5未満   3級非該当3級非該当

《表の見方》

1.「程度」は、診断書の記載項目である「日常生活能力の程度」の5段階評価を指す。 2.「判定平均」は、診断書の記載項目である「日常生活能力の判定」の4段階評価について、 程度の軽いほうから1~4の数値に置き換え、その平均を算出したものである。

3.表内の「3級」は、障害基礎年金を認定する場合には「2級非該当」と置き換えることと する。 《留意事項》 障害等級の目安は総合評価時の参考とするが、個々の等級判定は、診断書等に記載される 他の要素も含めて総合的に評価されるものであり、目安と異なる認定結果となることもあり 得ることに留意して用いること。 

今回の事例から学べること

(1)遡及申請において当時の担当していた医師が転任などをしていると、別の医師が診断書を書かざるを得ず、過去の評価は慎重になりやすい
大前提としてカルテは患者の診療経過(病状、診断、治療内容など)を正確に記録し、医療従事者間の情報共有を目的としております。”障害年金の診断書を記載するための資料”が本来の役割ではないので、カルテがあってもその内容から推測して記載せざるを得ない項目も多分にあり、重い評価を書きづらいことがあります。

(2)カルテ開示は重要な手がかり
「当時の主治医が別の病院に勤務しているだけ」というケースは珍しくありません。

(3)診断書の書き方には補足で対応できる場合がある
現在の勤務先名で作成し、備考欄で過去の診療関係を明記することで、
制度上の要件と実態の両方を満たせることがあります。

(4)諦めずに、丁寧なコミュニケーションを
医療機関には立場・責任があります。事情を共有しながら進めることが大切です。


まとめ

今回のケースは、

主治医が変わって遡及は難しい
ーー そう見える状況からでも、道が開けた事例

です。

同じように、

  • 遡及は無理だと言われた
  • 医師が替わってしまった
  • 診断書が軽く書かれてしまった

とお困りでも、整理の仕方や依頼の進め方で解決できる可能性があります。

お一人で抱え込まず、早めにご相談ください。

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